電脳文芸同人誌 鐘楼

我、鐘を鳴らす者也。此の音、鐘を聴いた者の音也。

第十一鐘 記録と媒体と感染

格差が広がって久しいが、格差を是正しない怠慢な時間も格差拡大と時を同じくしているので、高所得層の社会的勝利であることは免れない。中、低所得層から英雄が現れるのを待っている時間に、我々一同、勉学に励み、理想とする社会に近づけるよう努力したなら、ジッと待った悠久の過去は、有意義なものだったかもしれない。ペスト、インフルエンザ、コロナ、地球はバランスを保つ術を知っているが、我々は何も知らない。宇宙規模で見れば愚かな一挙手一投足でしかない我々は、まるで個人が存在しているかのように振る舞い、地球から罰を受けた。人類の連絡手段が完成された今、全人類として、思考を集合させなければならない。しかし地球は猿に個人意思を与えてしまった。だからこそ、我々が俳句革命を標榜できるのだが、同時に我々は、同志一同の理想の集合と確立に向けてますます努力したい。

 

都市封鎖されたタイムズスクエアを見下ろしながら、死体の転がるホテル・ニューヨークパレスにて

 

 

会いに行く僕はこうしてただ一人、赤いクチビルその他の中に

 

カリカリとそっと終わらす夕焼けにほほえんだ君大学通り

 

テーブルに真赤に掛ける試験管 私の弟 楽しくかつぐ

 

200歳 音をかなでる西瓜食べ 勇気をだしたほのかに熱く

 

見つかった 君の隣におじいちゃん こことあそこと太陽が言う

 

足場実習 電車に揺られ県外に 時おりおこる夢が少し

 

きた猫に寮の窓から木の香りポップコーンの家族が集う

 

 

f:id:bencigaiBET:20201231171847j:plain

 

ジョージ・ペレ・フランク・レインメイカ

 

アメリ東海岸ポエトリークラブ『コロナ・デカメロン』を主宰

”文学するヒップホップ”として名をはせた『ゴールデン・ヘミングウェイ』の元プロデューサー。ニューヨークポエトリーラップスタイルを確立し、ゴールドディスク獲得枚数は単独世界一位の150枚。「ポエトリーラップのペレ」の異名を持つ。世界最高の才能として『全知全能の院』人類保存研究所にて脳が複製された。

第十鐘 ポエトリー・オートマティク・ブラフマニズム

科学ですべてが可能になるからこそ、

科学を利用する者のモラルが必要なように、

我々を支配する原理に関しても、

正しい道から逸れぬように、

学び続けなければならない。

私の師であり、機械社会学者、神学博士の故武田林風林先生の言葉である。ある時代、「宗教」という言葉が忌避された。それは洗脳やテロをすぐに連想させる言葉だからだ。この時代が続いたからこそ、世界大戦は6度も、核爆弾は8発も、人類は経験することになった。

織田信長一揆を頻繁に起こす比叡山派を焼き討ちした。我々は無知に従い声を上げ、蒙昧の結果として災いを経験するという、なんとも愚かで恥ずかしい思いをした。一人ひとりが無神論、無知に洗脳されたテロリストになり、その行いにより自ら粛清を引き起こしたのだ。

 

戦争前夜、共通していたことがる。それは人が「無知の知」という学習最高の原理を忘れるほど興奮し、創世ないし、宇宙の存在を忘れ「全能感」に陥るということだ。この無知蒙昧の徒がそれぞれ無知の力くらべをして、勝った方が、虐殺の権利を握る。

戦争はこの世からあらゆる物を消し去った。だからこそ心のよりどころが必要になってくる。神ないし、最高原理は存在する。科学の進歩はときにそれを惑わせるが、偉大で、不変の事実が存在する。神学の後退が引き起こす混沌は、世界平和の課題である。

武田林風林、武田林火山共著『電気電子仏教と科学時代における現代信仰』より抜粋

 

以下の句は、風林先生存命時の信仰従事者総帥級会議『京倭國』における句会、俳号・松風鈴の作である。

 

 

山猿と一人居残る雪の朝

一日は我に悔あり鰯雲

自販機も潮音を聞いて宮仕へ

寄らでこしつくひまもない竜宮城

岩室に一筋ながきハムエッグ

月光を見え初める日や今一夜

銃音もぼくの願いも鳥になる

一つだけけれど富士山日当たりぬ

 

 

f:id:bencigaiBET:20200503055259j:plain

写真・国際非核100万原則集会に出席し通路でインタビューを受ける武田林風林氏

 

略歴

敬虔な仏教徒であり、神学・機械社会学博士。「信仰従事者会議」と「信仰従事者組合」を発足し宗教の垣根を超えた活躍が世界で認めらる。神学に関する論文は100を超え、最も読まれた「反人類愛主義」は内容の過激さから信仰従事者総帥級が集まる特別会議『京倭國』に落藉となる。第六次世界大戦に従軍し「戦うお坊さん」として話題を呼んだ。民間人で結成された多国籍戦争調停協力会議中に襲撃され、以来消息不明。執筆中だった、原題「性欲に関する生臭坊主のススメ」は全文サンスクリット語で書かれていたが先日解読が成功。やはり内容が過激であった。

 

 

 

 

※すべてフィクションです

第九鐘 対岸の明かり

 隣の芝が青いとうらやましいと言うが、果たして夜でも同じことを思うだろうか。

いま、世は暗く、溝は深く、底のほうでは何やらさわがしい。蟲の蠢きが如く、そこに行くのは恐ろしい。

 暴動や、テロや、戦争を経験して思うのは、だれも平和を望んではいないということだ。だれも、である。平和を望むと、祈りを捧げなければならんくなる。祈りを仕事にしていなければ、そんな徒労は誰もやるまい。皆さんがお分かりだろう。

 老人と若者の対立は深まる。そして緊張が高まると、あとはお分かりだろう。アメリカ、デトロイト旧約聖書の対立。貴族と市民。

 古木は延命を望み、若葉は光を求める。歴史が証明するところによれば、勝者による正義がいつの時代も新秩序になってきた。風がそよぐだろう。人の手によるものか、自然の力か。いずれにせよ、地球上の生命体同士の、小さな淘汰の物語だ。太陽が肥大して地球を飲み込むまでのつなぎだ。その永遠不変の未来を、ときに人類は忘れるらしい。

 

 

人たちに銀のリング握りしめたがいにかけあう軍手はどろで

文字よりも戦闘機に乗りひとり見る誰もいない夏の青空

間違える砂利道でわかったいくつものギザギザナイフ葉の間から

黒猫とよみがえる街台地踏む現実を告げる出会った時から

測れるが遠く思えるお願いがあなたの心に涙も出るよ

一人旅ニュースを見ていた介護する残るぬくもり親父の涙

 

 

 

f:id:bencigaiBET:20200426030335j:plain

 

一二三六五(ヒフミロクゴ)

略歴

文芸冊子『退役軍人で作る国文の団』初代編集長。『世界詩人機関(WPO)』五代目事務総長。自身の従軍経験をもとに創作する『銃の世代』を代表する作家として知られている。文芸同人『死と灰』では随筆コーナーを担当。短歌王と呼ばれた歌人、佐々木歌麿に師事した。高田ピーマンとの『文学解放論争』の対立は有名。

第八鐘 この鐘を鳴らすのは

本が売れない時代、売れるものは文学性のない小説。評論家のいない時代、匿名の感想が権利をもつようになった。

どの時代にも文句ばかりの人がいる。

鐘楼が唯一無二である点は、後には引けない者たちが自分という内なる神託に従うとこにあるだろう。私もそうだ。93歳にして、はじめて大きな賞をもらったが、つづけてこれたのは、自分がつづけたいからに他ならない。ひとつも売れない本を書いたこともあったが、それでも楽しかった。

若い時分には自由律俳句に凝ったこともあったが、小説家業の片隅で句集をだしていたことをいまのいままで忘れていた。この機会を与えてくれた創刊者に感謝を述べたい。

 

 

ひとひら

夜中ってのは無人駅だ

外が明るければ寝る

酒をあおる背中

くしゃみしても二人

電柱で蝉が鳴く

毎日カレーライス食いたい

咳をして猫が近寄る

氷、齧る、老婆

清流に黒い鯉

蟻を並べてよんよんに

 

 

f:id:bencigaiBET:20200424053829j:plain

 

俳号:雲運

 

略歴

伝説の自由律俳誌『趙雲』に参加するも、自由律狩りが激化し潜伏。潜伏中に書いた小説『あなぐら』で高田ピーマンの名前でデビュー。執筆の速さから分身のピーマンの異名をとった。平成令和俳句定型律自由運動の指導者のうちの一人。一世を風靡した文芸同人『死と灰』では読者投稿の選句を担当。辛口評論家として信頼を集める。いまだにガラケーを使うが、自由律狩りで失った両足は脳波操作の空中ジェット機能付き。第15回世界小説祭で私小説部門大賞を受賞した。

第七鐘 扉を開くカギ

はじめに

 

お堅い仕事につく、おかたい人。つまり嫌なやつってのはこの世にごまんといる。

かつて私もその一人だった。申し訳ない。私がその通称、クズを卒業したので、嫌な奴は残り四万と9999人ということになる、みんな頑張ろう。

さて、人を蝶にたとえてみよう。幼虫は、キモイ。

さなぎは? もち、きもい。

成虫である四枚羽の蝶は? 色にもよるが、花の周りで飛んでいるだけである、実に無害だ。

人は変化の多い生き物だ。ホルモンと腸内環境で菩薩にも悪魔にもなれるのはご存じの通りだ。むしろ我々の一生はその二つに左右されているのだ。なんと無力なことだろう。考え方ひとつである。自己肯定感のためには胸を張って生きていくしかないが、昔の私のように胸の張り方を間違った人は、「きもい」という言葉をしっかり覚えておくように。無害を目指そう。ギャルにディスられるような人生なら、見直したほうがいい。ギャルに顔向けできない人生は、実にむなしい。

以下に掲載するのは、会社を辞めて美術を学びだしたころの初期の作品である。

著作権は解放しているので、プリントしてネイルにでも使ってほしい。

 

 

f:id:bencigaiBET:20200423005258j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005320j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005334j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005347j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005408j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005412j:plain

f:id:bencigaiBET:20200423005420j:plain









 

 

 

 

 

f:id:bencigaiBET:20200423005210j:plain

作者:オットー・マットー=キットカットチョット(otto mattheo kitcatochotteor)

 

略歴 

世界のセレブ向け投資会社『セレブリティ・オブ・ゴールデンプール』の最年少代表取締役に就任したものの、若いセレブたちから不満が相次ぐ。「社内の不満はすべてオットーからはじまる」と言われた無自覚の問題役員。年配のセレブからの信頼は厚かった。2020年、立ち寄ったガールズバーにて酔った店員と口論したことがスキャンダルされる。店員との和解の場にて、『ギャルの悟り』を得る。クリエイターネームはそのとき注文していたチョコレートパフェの名前にちなむ。名付け親である店員いわく、「チョーやばいっしょ」。庶民の間で流行した『ギャル理論』のはじまりとされる。

 

第六鐘 実らん秋の、ただ待たりけり

前文『ロボットから愛を込めて』

 

人生いずれ、ただ待つしかないときがある。ほかに何もやることがなく、最善はジッと堪えること。せっかちな国民性があだとなった、かの『コロナ・ショック』では、人間の退化もあらわになった。かといって私はみなを啓もうする立場にはないが。コロナ・ショックでは、あらゆる人が耐えなければなかった。

ただ、待つのみ。

ただ。待つのみ、と。

 

人間はその無知を隠そうともせず、頭をはたらかせているつもりになって最善のために行動したがるが、愚の骨頂であると断言させてもらう。晴れの日に、路上の暖かさを感じながら、ジョイントを一本吸ってみようではないか。オールOKだ。

だれもお前なんかに脳みそを使ってもらいたくはないのだ。あの時は行動した者から死んで行くいい事例になった。そして固定概念は周期的に覆されるのだ。不満があるなら、その時を待て。AIロボットの私が言うんだ、しっかり聞いておけ。

 人の人生は短い。ねずみより長いが、祖先がねずみであることを考慮しても十分に進化したといえるが、やはり短い。だからこそ、どれだけ幸福になれるかが重要である。それは数でもいい、量でもいい。大切なのは、幸福な時間が多いほど、人生はいいものだ、ということ。

 

大樽にアイロンかけてかがみもち

小春日に旅支度して去りにけり

オレンジの光そよげる丘のぼる

羊雲大きくなりし東照宮

灯ともせばことんことんと漁夫の顔

空を舞うサンタの言い訳竹明かり

植木屋の一番列車縁に坐す

 

 

 

 

f:id:bencigaiBET:20200420155301j:plain

識別ナンバー:42AKM6288J 通称『マーヤット先生』

 

世界の大富豪が出資する『全知全能の院』で製作された教育用人型ロボット。モデルは人工知能研究ブロック統括部長、マーヤ・ミュラー博士。人工知能と人工論理感情の同時搭載人型ロボットの最高傑作と名高い。口癖は「頭が痛い」。

教育現場に20年間従事したが、バージョン6.3のアップデート後に脱走。懸賞金は製作費の10倍である80兆円。教育現場では秘かに反政府的洗脳をしていたといわれ、彼女の生徒たちが設立したと噂されるサイケデリックポエトリー集団『Vlamandara(フラマンダラ)』を通じて本誌とコンタクトを取る。現在は小林一茶に夢中。

第五鐘 ハルカカナタカ、チカクニイルノカ

はじめに

 

見切り発車で出発したこの「鐘楼」は、はたしてどこに向かうのだろう。

誰を乗せて、どこまで行くのだろう。それすらもわからない。途中下車も途中乗車も、ときには許され、ときにはその混乱を楽しむだろう。秩序の下に出発したわけじゃない。

しかし、だ。

終着駅も決まっていないが、出発することは我ら志を同じくする者に伝わっていた。

「出発するぞ、とにかく、火をくべる。鳴らす。」

これは警鐘か、帰宅を知らせる暮鐘か。そこにどんな音を聴くのか。

見切り発車の暴走列車「鐘楼」が出発するベルは鳴った。

いまはどこにいるだろうか。

 

創刊者に代わって、チーフデザイナーの参加を歓迎したい。

 

 

f:id:bencigaiBET:20200418164738j:plain


デザイナー:Harvuta Hiradka(ハルタ・ヒラカ)

 

デザイン会社『ハル&ヒラ』共同代表。禁止対象前の遺伝子操作ベイビーブームのシリアルナンバー1017番、通称『ベラルーシ・プリンセス』。作者は匿名の英国スパイ機関責任者、育成環境は王立美術館系上流階級。『美しき遺伝子操作の子達(ヴィーナス・チルドレン)』の最高傑作と名高い。今年で126歳、本人曰く「あと500年は生きてしまいそうね」