第一鐘 我ら月下で舞踏する者也
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はじめに
鐘楼に初掲載を許された我々は、所謂、詩情を崇高のものとする過激派だ。文芸を読むとき、見えざる詩情まで読んでしまう。それはシャーロック・ホームズのように解読を能動的に要求しなくとも、経験と勘とで見えてくるものである。全ての読書人、創作人ができることではない、とこの同人の発起人は言った。我々は底知れぬ詩情を作品に要求し、創作活動にも同じことを要求する。
こうして文芸の舞踏会に招待されたからには伝統的に、かつ高貴に、同人の友の作品との調和を目指しながら、鐘楼を後世まで伝わるものとしたい。友を代表して前文を失礼する。以下の句は「平成・令和俳句定型律自由文芸運動」の旗艦誌、本誌、鐘楼の元になった同人及び同名の連名著作「死と灰」から自作を掲載する。茗荷貴夫
帰省して
身を焦がしたる
君を待つ
さまざまに灯をともしたる騒がしく
すいすいと居るとも見えぬそこらまで
アリだって買う冬晴れの明日へ生く
神様も自転車止めて名前言う
神様も夢中になって詩をよくす
やうやうに鳥のすがたが散りぢりに
切なさは四次元世界の日溜りに
のびのびし匂ひ切なる春満月
なべ囲み鯨の雲が高々と
湯豆腐や
水を飲みたる夜の河
作者:茗荷貴夫
ベルギー人の父と日系人のハーフ。日本への留学を経て2015年よりベルギー国内最大のフラマン語(オランダ語)俳句一派「ブリュッセル芭蕉」参加。翌年より主席俳人、上席顧問を務める。オランダのサイケデリックポエトリー集団「Vlamandara(フラマンダラ)」での活動が認められ、日本での文芸運動と本誌に参加する運びになった。