第二鐘 清流より愛を籠めて
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はじめに
招待を受けてこちらに失礼します。女流作家として三十年、文学の流転を時には中心で、ときには端っこで、書物の純血に淀みのないように漂っていましたが、私のこじんまりとした船にも ”あの運動” (令和・平成俳句定型律自由文芸運動)
の波が、嵐が押し寄せました。私のおんぼろは波任せ、風任せで行くものですから、当然こちらに漂着した次第でございます。私の創刊しました同人「錦鯉」からも幾人か参加する予定ですので、お手柔らかにお願いします。錦鯉から数句、こちらに失礼します。西紀その子
眠ってるあなたの速度、光る川
病む人の、まだ降る雨や夏の風
つながれて、忘れてしまう梅雨便り
燕来て別世界への始業式
まだ醒めぬ見えない自分の匂ふもの
対岸の家に帰りてさびしけれ
揺れ光る、よぎる思ひの雪の粒
春の庭、恋さまざまの色にして
西紀その子
在留アメリカ軍元大佐であり詩人、米国帰化二世の西紀エドウィンを父に持つ。14歳で初翻訳したアルベルト・ハンバーギストの小説『キッチンとねずみ、アルバイトの病欠』が日、米、仏で大賞を受賞。今年でキャリア30年のバイリンガル。女流同人『錦鯉』代表。18年から英語翻訳家協力会議理事を務める。