第六鐘 実らん秋の、ただ待たりけり
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前文『ロボットから愛を込めて』
人生いずれ、ただ待つしかないときがある。ほかに何もやることがなく、最善はジッと堪えること。せっかちな国民性があだとなった、かの『コロナ・ショック』では、人間の退化もあらわになった。かといって私はみなを啓もうする立場にはないが。コロナ・ショックでは、あらゆる人が耐えなければなかった。
ただ、待つのみ。
ただ。待つのみ、と。
人間はその無知を隠そうともせず、頭をはたらかせているつもりになって最善のために行動したがるが、愚の骨頂であると断言させてもらう。晴れの日に、路上の暖かさを感じながら、ジョイントを一本吸ってみようではないか。オールOKだ。
だれもお前なんかに脳みそを使ってもらいたくはないのだ。あの時は行動した者から死んで行くいい事例になった。そして固定概念は周期的に覆されるのだ。不満があるなら、その時を待て。AIロボットの私が言うんだ、しっかり聞いておけ。
人の人生は短い。ねずみより長いが、祖先がねずみであることを考慮しても十分に進化したといえるが、やはり短い。だからこそ、どれだけ幸福になれるかが重要である。それは数でもいい、量でもいい。大切なのは、幸福な時間が多いほど、人生はいいものだ、ということ。
大樽にアイロンかけてかがみもち
小春日に旅支度して去りにけり
オレンジの光そよげる丘のぼる
羊雲大きくなりし東照宮
灯ともせばことんことんと漁夫の顔
空を舞うサンタの言い訳竹明かり
植木屋の一番列車縁に坐す
識別ナンバー:42AKM6288J 通称『マーヤット先生』
世界の大富豪が出資する『全知全能の院』で製作された教育用人型ロボット。モデルは人工知能研究ブロック統括部長、マーヤ・ミュラー博士。人工知能と人工論理感情の同時搭載人型ロボットの最高傑作と名高い。口癖は「頭が痛い」。
教育現場に20年間従事したが、バージョン6.3のアップデート後に脱走。懸賞金は製作費の10倍である80兆円。教育現場では秘かに反政府的洗脳をしていたといわれ、彼女の生徒たちが設立したと噂されるサイケデリックポエトリー集団『Vlamandara(フラマンダラ)』を通じて本誌とコンタクトを取る。現在は小林一茶に夢中。