第三鐘 混沌は続く
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はじめに
本誌が非難を浴びることは明らかだ。私のような犯罪者の文学志向を許すのだから。されどこの同人の創刊者は、世俗的な犯罪者と、超自然的な英雄の違いを心得るお方である。加えて、文学的韜晦(とうかい)の有無を判断できる選ばれた読者を抱えるのだから、とてもじゃないが私はあたまを上げられない。自分のしたことについては理解している。獄中というのはやることがない。だからこその結論を述べる。悪を誅するのは、人の本望であると。しかし誅したところで自身も悪になり、世は悪がはびこる形になる。しかし悪にはランクがある。それは裁判と判決と罰金に表れているではないか。悪者は、あなたが悪に染まっていないことも悪いことだ、と言うだろう。そう言われてしまえばもはや悪なのだ。シュレディンガーの認知のように、観察が成立してしまう。
私は万引きでもするように、悪代官を刺しただけだ。散歩でもするかのように天誅へと向かっただけだ。息があるなら行動を起こす。私の心にわたしは従うのだ。見るがまま、感じるままに。素直さもまた、文芸の本質だろう。黒岩涙次
お年玉
前髪そよぐ
女の子
ひや飯に
手をかざしつつ
日を抱けり
病院や
入口それは
冬の夜
引きぬくと
そこから暗き
大般若
明日は早や
窓の向こうに
好きな空
交番から水濁るなり春の海
電灯が雨に流るる夏の風
下町のそらをうつせば秋の蝉
闇もをば衣替えする薄氷
詠者:黒岩涙次
本名ジャンルイジ・サンタンデッラ=佐藤。ミラノ国際大学国際文学科卒業。在学中よりイタリアンマフィアの家庭教師を務めるが、マフィアの後ろ盾により出馬。それを公表し話題を呼んだ。世界中の富豪が出資する研究所『全知全能のための院』では哲学第三実験室で室長を務める。専門分野は性悪論、悪との共存。2000年より日本国籍を取得。結社『国民でつくる税金監視部隊』の共同設立者。使途不明な災害寄付金の中心人物殺害を扇動したとして拘留中。ジャーナリスト、ノンフィクション作家としての一面ももつ。ノンフィクション『現代悪代官100選』、『マフィアに頼らない! フランスに学ぶ政治家のころし方!』は国内外で話題を呼んだ。18か国で警察関係のブラックリストに入っている。